戦術教科書 / 第4章
第4章 ディフェンス戦術の考え方
マンツーマンの原則、ヘルプとローテーション、スクリーン対応の選び方、ゾーンとその組み合わせ、プレスまでを整理する。
4-1 マンツーマンの原則
マンツーマンは一人が一人を担当する守備で、あらゆる守備の基礎である。ボールを持つ相手には腰を落として適切な間合いを取り、ドライブのコースを体で塞ぐ。ボールを持たない相手には、ボールと自分のマークの両方が視野に入る位置に立つ。ボールと自分とマークで三角形をつくることから「ボール・ユー・マン」と呼ばれる考え方である。
立ち位置はボールからの距離で変わる。ボールの隣にいる選手には、パスコースに手を入れて簡単に受けさせないディナイを行う。遠い選手には、ゴール寄りに下がってヘルプに備えるヘルプサイドの位置を取る。ボールが一度動くたびに5人全員が位置を修正することが、マンツーマンの本質である。一人でも止まっていると、そこが守備の穴になる。
- ボール・ユー・マンの三角形を保つ
- ボールに近い相手にはディナイで圧力
- 遠い相手にはゴール寄りのヘルプ位置
- ボールが動けば5人全員が位置を直す
4-2 ヘルプとローテーション
誰かがドリブルで抜かれたとき、近くの味方が助けに出るのがヘルプである。ヘルプに出ると今度はその選手のマークが空くため、さらに別の選手が素早くそこを埋める。この守備の連鎖をローテーションと呼ぶ。最後には、ボールから最も遠いパスを守備が許す形にするのが理想で、そうすればパスが飛んでいる間に戻る時間が生まれる。
ヘルプに出た後、空いたシューターへ詰め寄る動きをクローズアウトという。勢いよく飛び出すとドライブで簡単に抜かれるため、最後は小刻みなステップで間合いを詰め、手を上げてシュートを妨げる。ヘルプ、ローテーション、クローズアウトの三つは常にセットで練習する。声で「ヘルプ」「スイッチ」と伝え合うこともチーム守備の重要な技術である。
- 抜かれたら近い味方がヘルプに出る
- 空いた所を次々に埋めるローテーション
- クローズアウトは最後に小刻みなステップ
- 声で伝え合うのも大切な守備の技術
カット・移動パスドリブルスクリーン1〜5オフェンスXディフェンス
4-3 スクリーン対応の選び方
ピック&ロールへの対応には主に五つある。スクリーナーの守備者が下がってゴールを守るドロップ、前に出てハンドラーを一瞬止めるヘッジ(ショウ)、二人でボールを挟むブリッツ(トラップ)、マークを交換するスイッチ、サイドのPnRでスクリーンを使わせずベースライン側へ追い出すアイス(ダウン)である。ハンドラーの守備者がスクリーンの上を通るか下を通るかも合わせて決める。
どれを選ぶかは相手と自分の人材で決まる。相手がプルアップの3ポイントを得意とするならドロップは危険で、ヘッジかブリッツが候補になる。こちらに機動力のあるビッグがいればスイッチが有効だが、背の低い選手が大型選手に付くミスマッチを突かれる弱点がある。一試合の中でも相手や時間帯に応じて使い分けることが多く、全員が共通の約束を持つことが前提となる。
- ドロップ: 下がってリムを守る
- ヘッジとブリッツ: ボールに強い圧力
- スイッチ: マークを交換、ミスマッチに注意
- アイス: サイドのPnRを外へ追い出す
4-4 ゾーンディフェンス
ゾーンは一人一人が担当する地域を守る守備である。前に2人・後ろに3人の2-3ゾーンはゴール下とコーナー付近に強く、トップとハイポストに弱い。前に3人の3-2ゾーンは外角に強いがゴール下が手薄になる。1-3-1ゾーンはウイングやトップに圧力をかけやすくトラップと組み合わせやすいが、コーナーとベースラインが弱点となる。
ゾーンの長所は、インサイドを固めながら大型選手の体力を温存し、ファウルも減らせることだ。弱点は、シューターの多いチームや、ゾーンの隙間(ギャップ)とハイポストを使う攻撃に崩されやすいことである。NBAではディフェンス3秒の規定があるため、ペイントに留まり続ける純粋なゾーンはFIBAや大学ほど一般的ではなく、局面的に使われることが多い。
- 2-3: ゴール下とコーナーに強い
- 3-2: 外角に強いがゴール下が手薄
- 1-3-1: トラップ向き、コーナーが弱点
- ゾーンの弱点はギャップとハイポスト
4-5 組み合わせ型の守備
マンツーマンとゾーンを組み合わせた守備もある。ボックス・アンド・ワンは4人が四角形のゾーンを敷き、1人が相手のエースをマンツーマンで追い続ける。トライアングル・アンド・ツーは3人がゾーン、2人がマンツーマンを担う。どちらも特定の得点源を消したいときに使われ、他の選手にシュートを打たせても構わないという割り切りが前提になる。
マッチアップゾーンはゾーンの配置から始め、自分の地域に入ってきた相手をマンツーマン的に守る。攻撃側から見るとマンツーマンなのかゾーンなのか判断しにくく、セットプレーの選択を迷わせる効果がある。試合の流れを変えるため、タイムアウト明けやフリースローの後など、守備の形を切り替えやすいデッドボールの場面で一時的に使うのが定石である。
- ボックス・アンド・ワンでエースを消す
- トライアングル・アンド・ツーで2人を消す
- マッチアップゾーンで攻撃を迷わせる
- 切り替えはデッドボールの後が定石
4-6 プレスディフェンス
プレスはコートの広い範囲で圧力をかける守備で、フルコート(全面)とハーフコートがある。2-2-1プレスは前の2人がボールを運ぶ相手をサイドライン際へ誘導し、そこで2人で挟むトラップを狙う。1-2-1-1(ダイヤモンド)はスローインの段階からより積極的にトラップを仕掛ける型である。いずれも得点やフリースローの後など、守備が整った状態から仕掛ける。
プレスの目的はターンオーバーを奪うことだけではない。ボール運びに時間を使わせてショットクロックを削り、相手のガードを疲れさせる効果もある。一方で突破されると数的不利のまま速攻を許すため、最後尾の選手の判断と、トラップ後の素早い戻りが欠かせない。8秒ルールと組み合わせることで、ボール運びの苦手なチームには特に大きな圧力となる。
- 2-2-1: サイドライン際でトラップ
- 1-2-1-1: スローインから積極的に挟む
- ショットクロックを削り、相手を疲れさせる
- 突破されると数的不利の速攻を許す
実例で学ぶ
参考にした情報
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