戦術教科書 / 第1章
第1章 基本の基本 ― 目的・コート・時間・ポジション
得点の仕組み、FIBAとNBAのコート寸法と試合時間、24秒ルール、5つのポジションと試合の流れを押さえる入門章。
1-1 バスケットボールの目的と得点
バスケットボールは5人対5人で、相手のバスケットにボールを入れて得点し、自分たちのバスケットを守る競技である。試合終了時に得点の多いチームが勝ち、引き分けはない。フィールドゴールは3ポイントラインの内側からなら2点、外側からなら3点、ファウルで与えられるフリースローは1本1点だ。同点で終わればオーバータイム(延長戦)を行い、決着がつくまで繰り返す。
得点の種類が三つあることは、あらゆる戦術の出発点になる。同じ1回の攻撃(ポゼッション)でも、確率の高い2点を狙うのか、確率は下がるが3点を狙うのか、ファウルをもらってフリースローを得るのか。両チームの攻撃回数はほぼ同じになるため、現代の戦術論の多くは「1ポゼッションあたりの期待得点をどう最大化し、相手のそれをどう下げるか」という問いに行き着く。
- フィールドゴールは2点か3点の2種類
- フリースローは成功1本につき1点
- 同点なら5分間のオーバータイムを行う
- 攻撃回数はほぼ互角、勝負は1回の質
1-2 コートの寸法 ― FIBAとNBA
FIBAのコートは長さ28m×幅15mで、3ポイントラインはバスケット中心から6.75m、コーナー付近は6.60mである。フリースローラインはエンドラインから5.80mにある。NBAは94フィート×50フィート(約28.65m×15.24m)とやや大きく、3ポイントラインはトップで23フィート9インチ(約7.24m)、コーナーはサイドラインから3フィートの直線部分で約22フィート(約6.71m)となる。
どちらのルールでもコーナー3が最も短い3ポイントである点は共通で、NBAではトップとの差が約50cmもある。これが「コーナー3は効率の良いシュート」とされる理由の一つだ。ゴール下には半円が描かれ、FIBAでは半径1.25mのノーチャージセミサークル、NBAでは半径4フィート(約1.22m)のリストリクテッドエリアと呼ぶ。役割はほぼ同じで、第2章で詳しく扱う。
- FIBA: 28m×15m、3Pは6.75m
- NBA: 94×50フィート、3Pは23フィート9インチ
- コーナー3はどちらのルールでも最短
- ゴール下の半円は半径約1.2m
カット・移動パスドリブルスクリーン1〜5オフェンスXディフェンス
1-3 試合時間とクロックのルール
FIBA(国際試合や日本のBリーグなど)は10分×4クォーター、NBAは12分×4クォーターで、オーバータイムはどちらも5分である。時計はファウルやアウトオブバウンズなどでボールがデッドになると止まるため、実際の所要時間はその倍以上かかる。前半と後半の間にはハーフタイムがあり、コーチはここで前半の問題点を修正する。
攻撃側は24秒以内にシュートを打ち、そのボールがリングに触れなければならない(24秒ルール)。シュートがリングに当たって攻撃側がオフェンスリバウンドを取った場合、ショットクロックは24秒ではなく14秒にリセットされる。この14秒リセットはFIBAが先に導入し、NBAも2018-19シーズンから採用した。またボールを保持してから8秒以内にフロントコート(相手側の半分)へ運ぶ必要がある。
- FIBAは10分×4、NBAは12分×4
- ショットクロックは24秒でリングに当てる
- オフェンスリバウンド後は14秒にリセット
- 8秒以内にフロントコートへ運ぶ
1-4 5つのポジション
伝統的にポジションは1番から5番まで番号で呼ばれる。1番ポイントガード(PG)はボールを運び攻撃を組み立てる司令塔、2番シューティングガード(SG)は外角シュートが武器の得点役、3番スモールフォワード(SF)は内外どちらでも戦える万能型である。4番パワーフォワード(PF)はリバウンドと中距離のプレー、5番センター(C)はゴール下の守備とリバウンドの要を担う。
ただし番号は「役割の目安」であって、固定された持ち場ではない。ディフェンスでは相手の誰に付くかで役割が変わり、オフェンスでもセットプレーによって立ち位置は入れ替わる。初心者はまず、ボールを運ぶ人、外で待ってシュートを狙う人、中で体を張る人という三つの役割の違いから理解するとよい。そこから各番号の細かな仕事に進めば混乱しにくい。
- 1番PG: ボールを運ぶ司令塔
- 2番SG: 外角シュートの得点役
- 3番SF: 内外で戦える万能型
- 4番PF・5番C: リバウンドとゴール下の柱
1-5 ポジションレス化の流れ
2010年代以降、ポジションの境界は急速に薄れている。センターが3ポイントを打ち、フォワードがボールを運んで攻撃を組み立てる場面は今や珍しくない。背景には、データ分析によって3ポイントの価値が見直されたこと、そしてスイッチディフェンスの普及で、誰とでもマッチアップできるサイズと機動力を兼ね備えた選手が求められるようになったことがある。
そのため現代ではボールハンドラー、ウイング、ビッグという大まかな括りや、「ストレッチ4」「ポイントフォワード」「3&D」といった役割の呼び名が使われることが多い。指導の現場でも、育成年代では身長にかかわらず全員にドリブル・パス・シュートを身につけさせ、ポジションを早く固定しすぎないことが推奨されている。体の成長が止まるまで将来の役割はわからないからだ。
- センターも3ポイントを打つ時代になった
- 役割名: ストレッチ4、ポイントフォワード、3&D
- 育成年代はポジションを早く固定しない
1-6 試合の流れ
試合はセンターサークルでのジャンプボールで始まる。FIBAではその後のジャンプボールシチュエーション(ヘルドボールなど)を、オルタネイティング・ポゼッションという両チームに交互にボールを与える方式で処理する。NBAでは原則として再びジャンプボールを行う。得点されたチームはエンドラインの外からスローインして攻撃を再開し、これを繰り返して試合が進む。
1回の攻撃は、ボールを運ぶ、セットプレーやモーションで守備を崩す、シュートを打つ、リバウンドを争う、という順に進む。攻守が入れ替わる瞬間をトランジションと呼ぶ。この「ハーフコートの攻防」と「トランジション」の繰り返しが試合の骨格である。以降の章では、ルール、オフェンス、ディフェンス、トランジション、試合の戦略の順に掘り下げていく。
- 試合開始はセンターサークルのジャンプボール
- FIBAは以後オルタネイティング・ポゼッション
- 攻撃→シュート→リバウンド→トランジション
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